サイエンスキャンプ

月曜から今日まで、サイエンスキャンプという、高校生対象のサマースクールの講師をやっていました。
サイエンスキャンプ

コアセンターに来たのは10人。
初日は宇佐で高知大の調査船に乗り、採泥とプランクトンの採取。

2日目はコアセンターの施設見学、コアからの微化石の拾い出しと、有孔虫の酸素・炭素同位体分析。

3日目は微化石の電子顕微鏡観察と、発表会。

最近の高校生は学校でパワーポイントの使い方も習ってるんですね。びっくり。

みんな、真面目でとてもいい子たちでした。最後には講師一同あてに色紙まで贈ってもらって、嬉しかったです。普通、送別会の色紙なんかでも2、3行しか書かないのに、それはもう細かい字でびっしり書いてあって。



実は私も、サイエンスキャンプのOB。参加したのは今から11年前、高校2年生の夏のことです。行ったのは当時の通産省工業技術院地質調査所、今の産総研地質調査総合センター。
所長だった小玉喜三郎先生以下、有田正史先生、加藤碵一先生、徳橋秀一先生という、そうそうたるメンバーに直接ご指導頂き、2泊3日の房総巡検。徳橋先生のご専門である上総層群のルートマップをちょっとだけ作りました。当時、産総研ポスドクをしておられた奈良正和先生は、准教授として今は高知大学の朝倉キャンパスにおられます。先日、久しぶりにお会いできました。


進路等悩んでいる時期だったので、その印象は強烈でした。地質に興味をもつ熱心な同世代がこんなにもいることに驚き、明け方まで語っていたことをよく覚えています。その頃は携帯のメールなんていうものはなく、帰った後は高校生同士で文通していました。先生方にもお手紙を差し上げ、ご丁寧にお返事をいただいて喜んだものです。
結局、参加者15人中4人が大学で地学関係の学部に進学しました。
今年の3月に当時の参加者の一部で集まって、プチ同窓会を開きましたが、みんないい大人になっていましたね。結婚して子供が生まれたりして。しかし、11年経った今でも連絡をとり合えるという関係は貴重です。そして、当時の生徒だった私が、いまはサイエンスキャンプの講師側にいるというのは感慨無量です。


初日の懇親会ではそのあたりのことも少ししゃべりました。麦酒、ではなく麦茶片手に。
今回の生徒さんたちに、またどこかで会える日が来ることを楽しみにしています。

付加体と巨大地震発生帯

東大出版会から本が出ました。
付加体と巨大地震発生帯 - 東京大学出版会
僭越ながら私も、序章と3章のお手伝いをさせていただいています。 ぜひ本屋さんでお手にとって、ご覧頂けると嬉しいです。
税込4830円と、ちょっと高くて申し訳ないのですが、著者割2割引き+送料でお分けできますので、購入を希望される方がもしいらっしゃいましたらご連絡ください。

「歴史と外交(東郷和彦著)」/「惑星(マゼール指揮フランス国立管)」

夏なので読んでみました。

東郷茂徳元外相を祖父にもつ元外交官・東郷和彦氏の近著。北方領土問題の頓挫で外務省を追われてから6年間の在外研究の結果をまとめたもの。靖国慰安婦、韓国、台湾独立、原爆、東京裁判という、日本のいわゆる歴史認識の核心に切り込んでいます。文章が流麗で、たいへん読みやすくおもしろい。
まえがきで筆者が述べているように、確定解は書かれておらず、現時点での形成途中の思索のとりまとめということです。そのためか、やや消化不良の感も否めません。官僚的すぎるかもしれません。しかし、日本国内の右から左までの意見、そして相手国の世論、教育、文化や歴史が大変よく整理されており、優れたレビューであることは間違いないでしょう。それをふまえた解決に向けての方向性も大まかには示されています。
もっとも重視すべきは、現実的な意味での国益。そのために自国と相手国の歴史と論理を俯瞰し、解決点を探る。この姿勢こそが本書から学ぶべきものだと思います。それは、国と国の問題に限ったことではないでしょう。



最近聴いてよかったクラシック。

組曲「惑星」ホルスト作曲。火星・金星・水星・木星土星天王星海王星の7曲からなる。「木星」中間部のメロディは平原綾香の歌で一躍有名になりました。
この曲は、カラヤン指揮ベルリンフィルの演奏が有名です(が、私はあんまり好きじゃない)。今までは、奇をてらわない堅実で重厚な演奏のデイヴィス指揮ベルリンフィル盤を愛聴していたものの、マゼール指揮フランス国立管の演奏を聴いて一度で気に入りました。録音も明瞭でとくに木管楽器の繊細な音をよく拾っており、大変結構です。
「火星」冒頭のおどろおどろしい雰囲気、終末部の止まりそうなほどのスローテンポとティンパニの強打。「金星」は一転して穏やかな演奏、「水星」も楽しい。「木星」は前半飛ばし気味で、中盤は朗々と歌い上げ、終盤は一度加速して最後は一気に減速。「土星」以後もダレない。とにかく大迫力、メリハリのある演奏。
マゼールという人は、天才肌というか凝り性というか、結構奇妙な演奏をすることも多く、いつもバランスがとれるかとれないかの瀬戸際にいる印象があるのですが、これは彼の工夫がうまく開花した非常によい演奏でした。

巡検案内

9月の、地質学会岡山大会で巡検案内をさせていただきます。
日本地質学会 - 岡山大会TOP
見学旅行B班「四万十帯牟岐メランジュにみる沈み込み帯地震発生帯の変形と流体移動」
定員までまだ余裕がありますので、もしご関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ふるってご参加いただけると嬉しいです。


申し込みは、
https://apollon.nta.co.jp/chishitsu
の「見学旅行予約」から、締切は17日月曜の18時です。


露頭の様子をちょっとだけ。




昨日は初めてよさこいを見に行ってきました。
踊りというか、競技ダンスに近いものがありますね。いやー、いろんな意味で熱かったです。

地震、コアラー

今朝がたの地震、場所が場所だけにぎょっとしましたが、横ずれで、フィリピン海プレートの中で起こったスラブ内地震のようです。それなりに大きな被害が出てしまったようですが、死者はいまのところ報告されておらず不幸中の幸いでした。

今日は終日、コアラーという機械をつかって石をくりぬきました。名前はコアラみたいでちょっとかわいいのですが、見た目はごついです。

実験

今日は、とある実験をしました。といっても、先輩2人につきっきりで教えていただいて、1日かかってやっと1回機械を動かしただけなのですが、心地よい疲労感があります。
実験というのは装置の中に小さな天然をつくりだすことで、箱庭に似た楽しみがあるのかもしれません。これははまりそうです。

今までなんだかんだいってフィールドジオロジーばっかりやってきた私。細かい作業が苦手で、手先はおそろしく不器用。ま、不器用なのは手先に限りませんが・・・
ひとたび実験をやってみると、ねじの締め方や、パーツの取り付け方に細かい作法がいっぱいあり、それぞれに意味があって合理的に考えられていることに驚かされます。早く自分でできるようになりたいものです。


席を外している間に、至急要返信のメールがたくさん来ました。明日の朝までに返さないと。

鳥研巡検その4

巡検最終日の5日。
この日は四万十帯・横浪メランジュ。三波川を見たあとに四万十の石を見ると、なぜか心が落ち着きます。
案内者は高知大(朝倉)の橋本准教授、通称はっしーさん。木村研の大先輩で、頼りになる兄貴分です。

鳥研巡検のメンバーのほか、コアセンターを訪問中の台湾大学の方々も巡検に参加され、総勢20余名の大部隊での巡検となりました(烏合の衆??いえいえ)。

今回は途中から雨が降ってきて、おまけに沖縄方面の台風の影響で波が非常に高く、チャートの壁まで行けませんでした。残念。
遠望の写真のみです。

ま、砂泥の変形構造や断層をそれなりに見られたので、よしとしましょう。



横浪は、私にとっても思い出の地。卒論配属後に初めて見た四万十帯の地層だからです。
東大では学部3年の最後に、研究室の配属がありました。
もともと私は構造地質をやりたかったものの、体系的な岩石学の授業にも惹かれ、どうしようか悩んでいました。
薄片で見る火成岩の中のかんらん石や輝石は美しく、それに対して変形岩の中の、いかにも見栄えのしない粘土鉱物ばっかり見て過ごすのはなんだかなぁ、という思いもありました。
それが、教官の方々による3年生向けのプレゼンを聞いて一変。学さんのいきいきとした話から、いま東大でおもしろいのは付加体だ、と思い、木村研究室の扉をたたいたのです。


指導教官と二言三言しか話さぬままに、とにかく来いと言われた4月上旬の巡検
集合は高知大学。今はなき夜行快速の「ムーンライト高知」に乗って18きっぷで行きました。


その頃の高知大は、はっしーさんが助手に着任して2年目で、そこに私と同期の4人の卒論生がついていました。
しばちゃん、太一、よこちん、伊藤ちゃん。
で、この人たちのキャラが非常に濃い。
年上の大人たちに混じって気後れする様子もなく、朝まで飲んで「愛とは」とか熱く語っているのですから。
私はそのとき風邪気味だったこともあり、完全に勢いに押され気味。
作り笑顔が引きつっていました。


彼らは3年生の後半から研究室に配属されるので、知識も経験も私よりあります。
もう何日フィールドに行っただの、海南層がどうだのという話を聞いて、これはやばい!と思いました。
何せ、こちらはまだ露頭を見たこともないし、地層の名前も何もしらない。
もちろん今では、東大には東大の、地方大には地方大のメリットとデメリットがあると思いますが、このときの印象は強烈。
所属する組織の名前だけで人を判断しちゃいけない、と強く思うきっかけになりました。


学さんと榊原さんが激しく議論していた、安和のメランジュ。ここで集合写真をとりました。

栄誠さん、有迅さん、川端さん、向吉さん、佐藤さん、近藤さん、桑野さん。
お世話になった先輩がたの歳を、私もはるかに追い越してしまいました。



さて、本日の思い出コーナーは終了。
晩は高知市内で大宴会@こうじ屋。
高知|歓送迎会|土佐ジロー|鰹|飲み放題|個室|接待| こうじ家
そしてこれが今のはっしー研の4年生たち。

台湾の学生さんたちを前に、英会話に四苦八苦。でも頑張って伝えようとしているのがほほえましかったです。


料理は非常に美味しく、また個人的にも来ようと思いました。
刺身も良かったし、たこの煮物があれだけ柔らかいのはすばらしい。
ただ、給料とりの人数に対する学生・ゲストの人数が思ったより多く、会計が大変なことに。。。
幹事として反省点の多い飲み会でした。たくさん出していただいた方には申し訳ないことをしました。



まぁそんなこんなで、いろいろありましたが総じてとても楽しい4日間でした。
鳥研巡検シリーズ、おわり。