秋の深まり

北向きのドアを開けて外に出た瞬間、穏やかな光に脊梁の山々がくっきりと映え、この南の国にも、朝の冷気が肌を刺す季節がやってきました。


冬生まれの私ですが、一年の中で、10月から11月にかけてのこの時期が一番好きです。夏は暑すぎて、冬は寒すぎる。春は何かと気ぜわしい。それにくらべて秋は落ち着きます。だんだん夜が長くなっていくのもいい。ちょっと寒くてちょっと寂しいぐらいが、ものごとをじっくり考えられる気がします。



秋はものゝひとりひとりぞをかしけれ空ゆく風もまたひとりなり
落初めの桐のひと葉のあをあをとひろきがうへを夕風のゆく
白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ
若山牧水



延岡が生んだ、酒好き旅好きの詩人・若山牧水。風もまた一人の秋に、「酒はしづかに飲むべかりけれ」とは、けだし名言です。